「それを暁と呼ぶ」禁断の愛に漂う奥深さがブニュエルらしい

あらすじ

ルイス・ブニュエル監督通算18作目となる禁断の愛を描いた作品。

地中海の孤島で働く医師・ヴァレリオ。彼の妻はニースでの暮らしをせがみ、静養のためひとり両親の下へ旅立つ。

そんなある日、ヴァレリオは往診先で未亡人・クララと出会い恋に落ちる。

人間の性について深く考えさせられる

この映画のタイトルである「それを暁と呼ぶ」という文にとても惹かれた。

 

暁の意味には2つあり、

太陽の昇る前のほの暗いころ。明け方。

待ち望んでいたことが実現する、その際。「当選の暁には」

 

という意味が両方込められている感じがした。

 

妻と別れて愛人と一緒になることを待ち望んでおり、まさに最後のシーンはその暁であった。

 

しかし、人生は全く人間の意思とは反したところで動いており、翻弄される人々の姿は太陽や自然に逆らうことができない存在として夜明けを待つしかない。

 

逆らえない性と、同時に良心の呵責に苦しむ人間の在り方を生き生きと映し出している。

 

かなりシリアルな内容ではあるが、最後のシーンには何か、暖かい希望のようなものを感じた。

 

誰かが死んでも、それでも日は登るという感じだ。

想像力をくすぐるブニュエルの発想力に感服

本作でも、ブニュエルの発想はますます冴え、ジュリアン・ベルトーがふてぶてしさを漂わせて好演している警察署長にポール・クローデルの詩を暗誦させ、詩人の全集を署長室のデスクに置き、さらに壁にはダリの描いた「十字架の聖ヨハネのキリスト」を配置するなど、数々のディテールでもって観客の想像力をくすぐっている。

 

セリフの一つ一つに味わい深さがある。

 

犯人を匿ったことを問い詰められた時、

「あなたならどうしますか?」と答えるシーンは、まるで視聴者に問いかけているような凄味を感じた。

 

私なら、どうするだろうか?

 

何かとても大切な問題提起を心の奥深くに植え付けられたような気持ちになった。

 

それでいて美しいラブストーリーとなっているところがまた凄い。

 

テンポよく展開するシーンに上手く散りばめられた問いかけや脚色。

 

またしてもブニュエルの魅力に引き込まれてしまった。